「研究の勉強」「テーマ決め」ってなんだ

そんなわけで,昨日今日は手を動かす作業は進まず,思考がまとまらず一人歩きした.

「興味=テーマ」は茨の道,さあどうする

テーマ設定というのは研究者が必ずできるようにならなければいけない技能ではあるが、大学院に進む学生全員は研究者になるわけではない。ましてや、学部生は。工学部・理学部の学生の半分が大学院(修士課程)に進学するとしても、残り半分は就職するのだから、それを考慮にいれた卒業研究指導をしないと。はっきりいえば、エリート研究者養成プログラムを学部生全員に適用するべきじゃない。

卒論のテーマ選択について - 発声練習

訂正:見出し間で分けるべき部分を混在させていたため,引用部分の後半を下に移しました.
前エントリのメモで書いた,「退学してまでやり直すのはお薦めできない」というのは,自分の体験から漠然とそう思う位でしかなかったのだが,これを見て腑に落ちるところがあった.

言い訳の余地を残したらまた不確定になってしまう。全力で研究して「やっぱりだめだ」「研究よりもやりたいことがある」と思ったら就職すればいい。その後M1で就活 + 社会研究。落ちても博士に行けばいいや、と逃げ道があると結果も中途半端になり、後悔が残る。M1の夏は、またインターンに参加して世界を広げよう。

来週の月曜から好奇心を封印することに決めた。 - ミームの死骸を待ちながら

Hashさんのエントリを読んでいたときのこの部分が引っかかっていたのだった.修士を終了して就職というプランを立てているのならば,M1から環境を変えて新しいテーマに取り組んだ上に,講義やら就活やらと並行させようというのは,博士という逃げ道がなくても--ポスドク問題等で逃げ道どころか一番の茨の道だが--中途半端な結果に終わるのではないかと危惧したからだ.この道の方こそ「12時間拘束」では済まないくらいに手足を使う事が求められるのではないだろうか.*1もっとも,このエントリの時点では研究室をやめる事は考えていないはずだし,今も研究室に残る道を探っているのだからこれは大きなお世話なのだが.
もっとも,自分の体験やid:Hashさんが(エントリを見る限り)悩んでいるのは「我慢できなかったんだけど,もう修士始まっちゃったよ,どうしよう」という状況である.この状況になってしまう人はそれなりにいるんじゃないか,というのは前にとても回りくどく書いた事で,そうなっては遅いので,卒研開始から半年(つまり院試の前)に,しこりの残らない形で興味を引っ込めるか,進む覚悟と戦略を決めるかを選択できないだろうか,という思いが一連のエントリを書き始めたきっかけだった.みんな結構我慢できるんだろうか?
追記:この部分の表現は極端すぎた.引っ込めるか突っぱねるかの二者択一ではダメで,「興味と教員の守備範囲をすり合わせる」という選択が第一になければいけない.

テーマ決めは「研究の練習」にならないか?

卒論テーマにこだわりすぎず、卒論と修論は研究の練習をする場だと割り切って、研究方法を勉強することを強くおすすめする。まあ、あんまりにも興味が持てないテーマだとやる気もしないと思うけど、我慢できる程度ならば我慢しても良いのではないかと思う。多くの物事は、自分がそれに対して精通してくると楽しくなってくる。

卒論のテーマ選択について - 発声練習

それはそれとして,では興味を引っ込めてやる「研究の練習」とは何か.研究の練習という形では示していないが,next49さんが担当する学生に身に着けて欲しいとしているのが『自然な疑問』を持つということだ.

卒業研究や修士研究、博士研究、科学的研究一般、技術的討論で求められる主張は、己の感情を相手に伝えるのが目的ではなく、自分が信じる事柄についてその理由を相手に伝えるのが目的。

だから、正解がない問題に直面したときには、

* その問題を解く必要性
* その問題が解決できたと判断できる条件(基準)
* その問題に対する解決法
* その問題に対する解決法をあなたが提示した条件で評価した場合の達成度
* その達成度で問題を解決できたといえるかどうかについてのあなたの主張

理想的には、これらをすべて相手に提示できないといけない。

とはいえ、こんなのをいきなり提示できるならばそもそも大学なんて通わないでいきなり科学界や産業界にデビューを飾ればよいので、指導者(先生、先輩、本など)の手助けをかりながらちょっとずつ答えられるようになればよい。

「どんな疑問や目標が求められているのか」という発想を壊したい - 発声練習

示された提示すべき事柄のうち上3つ,「問題を解く必要性,解決の基準,解決法」を示すというのは「テーマ決め」の根本なのではないだろうか.自然な疑問を持つ術を身につけることが研究の練習であるならば,テーマ決めを行うのは(実際に卒研テーマとして成立するかどうかは別として)研究の練習として良い題材ではないかと思う.卒研配属から院試までの間に,「自分の興味をテーマにできるか」に挑んでみることで,それが茨の道である事を実感し,無理だと思えば興味を引っ込めるきっかけにもできるのではないだろうか.

*1:興味にあったテーマができるという点ではだいぶ救われるかもしれない.それもまた茨の道である可能性は高いが